■かたちライブラリー制作のきっかけ
数年前、環境問題のデジタルコンテンツの制作を依頼され、地球環境の深刻な状況を知る事になりました。ライターと共に企画を練るために、図書館に通って環境問題の勉強をした私は、恐ろしいスピードでの動物の種類の減少、森の減少、そのほかいろいろなデータを目の当たりにし、ショックを受けたのです。たとえばニホンオオカミは既に絶滅しているので、日本には野生のオオカミはいないこと、そしてライオンもトラもゴリラもパンダもメダカも絶滅危惧種であること…。今まであまりにも何も知らなかったことに愕然としました。
その環境問題のコンテンツを作るために、動物のイラスト素材集を探したのですが、なかなかよいものがなく、写真素材の豊富さと比べて、イラスト素材のバリエーションが少ないことに不満を感じました。図鑑のようにリアルでありながら、素材として加工したりアレンジしたりするイラスト素材があったら便利なのに、と思ったことが、このかたちライブラリーを作るきっかけとなりました。
■制作の実際いよいよ制作が決定し、信頼するデザイナーやイラストレータに協力を要請したところ、皆快く引き受けてくれ、プロジェクトがスタートしました。(私も含め、最初はこの仕事の想像以上の過酷さに誰も気づいていなかったのですが…。その苦労話は以下皆さんのコメントをお読みください。) 動物園や水族館に通い、図鑑を読みふけり、公園で植物の写真を撮り、学名を調べる毎日が始まりました。にわか博物学者になったような気分です。生物の進化や分類についていろいろ勉強していくと、分類方法も日々変化していて、資料によって記述の違うものもたくさんあることを知りました。
一方、どんな風にイラストデータを作るか、ということも試行錯誤が続きました。Adobe Illustratorでの作業は、基本的に線と面(グラデーション)だけで立体感を表現しなければなりません。 質感の表現も非常に難しく、動物の毛並みや皮膚の起伏をどうやって表現するか、ウェット感とドライ感をどう表すか、悩みながら進めます。グラデーションをきつくすると金属的になってしまうし、ゆるくするとのっぺりした感じになってしまいます。本来有機的な自然物を、無機的な線と面で表すわけです。Adobe Illustratorという画材の限界に挑戦するような気がしました。
上がってきたイラストデータを見て行う、事実検証にも時間がかかります。 動物の耳の裏や足の裏、口を開けたときの歯の数、枝のつき方、雌しべや雄しべの形…。色々な手段を使って調べても、なかなか資料が見つからず、四苦八苦したものもあります。身近にあるもの、よく知っていると思い込んでいるものほど、実は知らなかったことに気づいたりしました。
農家が、種をまき、水をやり、温度に気を配り、手塩にかけて美味しい野菜を育てるように、私たちも一つ一つのイラストを育ててきました。ここから先は、ユーザーの皆様の出番です。腕をふるって私たちのイラスト素材を使って、美味しい料理を作ってください。 どんな料理が出来るのか、私たちも気になりますので、もし美味しいレシピが出来たら、教えていただけると嬉しく思います。